« プロジェクトマネージャ試験2006小論文の総評 | メイン | キャリア形成の順序と会計的知識について »

2006年10月23日

2006年PM午後II小論文 問3 解答速報

問3 業務の開始日を変更できないプロジェクトでの変更要求への対応について

1 プロジェクトの概要と変更概要
1.1 プロジェクトの概要

A社は人材派遣業である。最近の人材派遣の流れのネット化に対応して、また、地域の経済界の要請 を受けて製造業、そして特定地域に特化した就職転職WebサイトXの構築と運営に関与した。このサイトXは 翌年3月までにカットオーバしなければならない。

1.1.1 情報システムの概要

 サイトXは、WebサーバとデータベースおよびCMS(Contents Management System)によって構成されている。 従ってWebサーバは静的なhtmlファイルをおかずに、利用者のアクセスに応じて動的Webを提供する仕組みとなっている。

1.1.2 プロジェクトの概要

 サイトXをインフラを構築した上で、コンテンツを構築し、登録している人材・企業データをデータベース システムに移行する。プロジェクトの編成は、プロジェクト管理者である私と、契約・文書管理スタッフ1名、 ネットワーク構築チーム2名、コンテンツ制作3名、データ移行チーム2名の計9名である。

1.2 変更概要
1.2.1 業務開始日を変更できなかった背景

 A社は半年以内にまずWebサイトを立ち上げ、ビジネスをスタートしなければならない。これは地域経済界の 社会的使命であり、既にプレス発表なども済んでしまっている。また、人材募集には離職の多い時期(賞与、 異動時期)を狙う必要があり、カットオーバの遅れは地域全体のニーズへの未対応となりシステムへの信頼の喪失につながると 判断された。

1.2.2 変更要求

 サイトXの仕様について、要件定義が終了し外部設計に着手したタイミングで①静的Webでシステムを構築して 欲しい。②理由は検索エンジンを意識した対応(以下SEOという)、③SNS(Social Networking System)機能の追加であった。

2 変更要求への対応
2.1 検討した内容

 ユーザの要求を全て満たすと、大幅な工数増加につながる。その結果、大きなプロジェクト遅延要因につながる ため、次のような内容の検討が必要だった。

  1. 全てのページにSEO対応が必要なのかの検討
  2. 追加工数を受け入れるリスクをユーザを含めた検討が必要
  3. 緊急対応が必要なケースと不要不急なケースとの切り分けが必要
  4. そのうえでの段階的導入、中断するタスク等の明確化が必要

 以上の内容を、ユーザを含めて、スコープ管理委員会で議論した。そこで私は次のような意見を表明した。

  1. 人材サイトの全てのページにSEO対応を設置するとセキュリティ上の課題が発生するので、トップページコンテンツおよび 20P程度のhtml対応にとどめるべきではないか
  2. 追加工数を受け入れた場合、大幅な工数増加200%以上となり、カットオーバに間に合わない
  3. まずは人材募集サイト、マッチングサイトからスタートすべきであり、そのために必要な人材、企業データベース 移行を優先すべきではないか
  4. そのうえでの段階的導入、中断するタスク等の明確化が必要

 このサイトXの場合、地域活性化を目的としていることから、 情報戦略書の記載内容に基づいてプロジェクト計画書を見直すことが、ユーザにとっても当社にとっても 得策と考えたためである。

2.2 結果

 以上の検討の結果、次のような結論を得た。結論はスコープ委員会で了承され、 プロジェクト開発計画書および要件定義書が見直された。プロジェクトの遅延5%は予備工数で 対応できるとみられた。

  1. SEO対策を含めた静的ファイル化は20コンテンツ(開発工数の5%程度に とどめる
  2. カットオーバの時期は、経済環境等を考慮して変更しない。
  3. 人材サイト、データベースサイトはセキュリティを重視してSEO対策しない
  4. 人材データベース登録機能、人材データの移行の作業を優先作業とする
  5. SNSサイト構築は第二次開発とする
2.3 重要な観点

次のような観点でユーザと交渉し、また、配慮した。

2.3.1 利用部門の利便性について

利用部門は、カットオーバの時期を十分確保できるうえ、新たな課題であったSEO対応もTOPページ コンテンツを中心にして確保できる見込みである。また、必要以上のサイトの公開は業界事情を鑑みて セキュリティ上の課題があることを「工程見直し計画書」で指摘した。

2.3.2 運用部門の負荷について

むしろサイトX内部にCMS的要素を多数のこしたことによって利用部門の負荷(サイトXのコンテンツ改定を 含めて)は大幅に軽減されることが予想されることをユーザに提言した。

2.3.3 チームリーダの周知

チームリーダのうち、工数が5%程度増加する可能性のある、コンテンツ作成チームのリーダを事前に呼び出しておき 交渉の過程や、ユーザへの提案書、スコープ委員会の議論の内容について情報共有しておいた。そして事前に、 新ニーズに関する「工程見直し計画書」が採択された場合を想定した、新たな進捗計画書の作成を指示しておいた。

要員についてもチームリーダと同伴して、プロジェクトサブ会議の席上で、ユーザからの要望、交渉の経緯の概略を 説明し、工数が大幅に増加しない結果となっていること、余裕工数を残した作業ゆえ不安はないことを表明して、見直し計画を説明し メンバーの質疑応答を得た。

3 評価と改善
3.1 評価

   プロジェクトは納期内の完了した。また、当初絞り込んだ機能(人材登録、募集、マッチング機能)は ユーザの当初の要望を十分満たした。プロジェクト内部の工程も当初5%増加と見込んだ工数どおりに推移した。

3.2 改善

   今回は、偶然、当社の見直し計画がユーザの利害に合致してうまく交渉が進み、大過なくプロジェクトを終えることが できた。しかし、今回のようなケースが全てのケースに当てはまらないこともあり。
 そこで、ユーザからの問題のある提案や計画の見直しを受けた場合、契約書に準拠した交渉法、問答集などを整備する必要があると考えて 当社幹部と、今回の経験を元に整備を計画している。 以上

■2006年 プロジェクトマネージャ解答速報目次に戻る
■プロジェクトマネージャ試験小論文講座



投稿者 kitta : 2006年10月23日 10:15