システムアナリスト養成講座 プロジェクトマネージャ養成講座 システム監査技術者合格講座

21世紀SHIZUOKAへの提言-情報化-

()アイリンクコンサルタント 代表取締役社長

中小企業診断士/システムアナリスト 加藤忠宏

はじめに

 著者は現在、中小企業総合事業団、各商工会議所および静岡県商工会連合会をベースにしてシステムコンサルティングを行っている。本稿では、著者のコンサルティング経験に基づいて静岡県企業の情報化ニーズとその重要性、静岡県企業の情報化の現状および今後の課題と提言を述べてゆくことにする。

 

1.        情報化の重要性

1.1.       道具の革新としてのIT(Information Technology:情報通信技術)革命

 中堅規模の経営者から「なぜ、ITは必要なのか」と尋ねられたとき、著者は「道具の革新が経営の革新につながるから」と答えるようにしている。これはちょうど鉄砲の伝来によって、築城のありかたや用兵のありかたに革命的変革が生じたことに相似している。

 IT武装に失敗した企業は、おそらく近い将来に、武田勝頼が最弱と言われた織田信長の軍団に長篠の合戦で壊滅させられたような体験をするのではないか。また、黒船の伝来が従来の身分制度を変革させ封建制度を崩壊させたように、この数年の経済的勝敗が貧富の格差の拡大に発展しかねないのではないかと著者は危惧している。

1.2.       構造転換の必要性

1.2.1.      高収益率型産業への転換

 経済低成長の現在、企業経営に当たってはローコストオペレーションが求められる。しかし、ITを有効活用することによって高収益率型産業に業態転換することができる。例えば、印刷業を例にあげて示すと、従来は設備投資型産業であった。このため、輪転機の稼働率が経営生産性の指標であり、その多少に一喜一憂した。しかし、印刷業者のなかにはWebコンテンツ制作企業として業態を転換するものや、IT武装によって広告代理店機能やマーケティング機能を進化させつつコンサルティング業に進出するものも現れている。このような企業には過大な設備投資は不要である。

1.2.2.      IT活用企業の優位性

 IT活用企業の優位性は、「受注手段に多様性があること」、「顧客と多様な通信媒体によって有機的に連携していること」、「Quick Responseによって顧客満足を高めることができること」である。例えば、インターネットで事務用品を宅配する業態を開発したアスクル(http://club.askul.co.jp/)は、地元文房具屋と異なる媒体を使い消費者と結びつき、顧客満足を実現する物流システムを開発した。この結果、静岡県の事務用品小売店のなかには受注高が減少した企業もあると聞く。アスクルの例は、IT活用企業が他企業に対して差別的優位性を確立した事例といえる。

2.        静岡県の情報化の現状

2.1.       他県に対する優位性

 システムコンサルタントとして、全国各地で指導を実践させて頂いていて気がつくことは「静岡県の企業のIT武装は他県と比較して進んでいる」ということだ。この優位的要因として「インターネットインフラの整備されていること」、「多様な分野で、傑出したITリーダが存在すること」、「商工会議所、商工会、()しずおか産業創造機構などの組織がIT普及活動を活発に行っていること、早期にIT普及活動に着手したこと」などがあげられる。例えば、著者が指導させて頂いているインターネット型仮想工業団地である「しずおかインダストリアルパーク(http://www.fujisan.gr.jp)」では、本年インターネット受注で数千万円/年を達成し、受注額1千万円を超えた企業を2社つくりこんでいる。

2.2.       拡大するディジタルデバイド

 その反面で情報格差(digital divide)も拡大している。特に過去の成功体験をもつ経営者がIT武装の阻害要因になっているケースが散見される。過去の経験に頼る余り、周囲の環境の変化に対応しきれていないのが実情ではないか。このような企業には、「他企業に比べて競争力が低下している」、「業態が古くなって新にニーズに対応しきれていない」などの特徴がある。また、市町村間でもディジタルデバイドが拡大している。ITビル建設やCATV網の整備に余念のない自治体がある反面、それを見守るだけの自治体もある。この格差は、近未来において自治体の人口・産業構成格差、担税力格差につながると予想される。

3.        今後の提言

3.1.       地域・企業におけるITリーダーの育成

 組織や地域のIT武装を進めるためには、合意の形成を作りこむだけの強いリーダーシップが求められる。また、市町村や商工会議所・商工会等にはITリーダー育成の施策や支援制度の充実が求められる。

3.2.       組織の垣根を越えた地域連携

 現在、著者は各地域の下請負工業者を束ね仮想工業団地を作り、これらを組織や地域の壁を越えて連携させようとしている。このことによって、分散的に所在していた組織もインターネット等を媒体にして有機的に連携・協調することができる。例えば、「しずおかインダストリアルパーク」で受注しきれない受注も、「しみず産業プラザ(清水商工会議所=現在構築中=)」の企業と共同で受注する、ということも可能になることだろう。

以上

 
<データ>

SERIマンスリー2001.2 No.447 P22~23 より

△HOME