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第二分科会 企業連携支援分野 企業間ネットワーク

    『全国の下請製造業に劇的成果をもたらす
                    仮想工業団地の構築と運用』

平成13年度 中小企業経営診断シンポジウム 応募論文

統一テーマ 「経済構造変革期における中小企業経営の新展開」
〜中小企業の経営革新・創業等を支援する中小企業診断士〜

中小企業診断士 加藤忠宏



概 要

 仮想工業団地 (Virtual Industrial Park)とは、下請け製造業の技術を紹介するインターネット上におかれたポータルサイトである。著者は、商工団体を基礎とした仮想工業団地の構築・運用に平成9年から携わってきた。その受注成果は平成12年ベースで1億円を超え、その効果は拡大中である。また、その成果を認めた各県商工団体の要請により、技術の標準化を行い、各県に普及しつつある。最終的な目標は、全国に普及した仮想工業団地を介して人的交流を進めつつ、より一層の相互取引を拡大することにある。
 本ビジネスモデルは 全国商工会連合会「商工会」に取り上げられるほか、平成12年度同会全国事務局長会議で成果を発表させていただいたモデルである。また、その成果を評価され、著者は全国商工会連合会仮想工業団地調査研究委員を平成13年度拝命している。

はじめに(問題提起)
 インターネットによるB to B(Business to Business)取引はいまでこそ隆盛の勢いである。しかし、著者が手がけた平成8年ころはインターネット普及段階で仮想工業団地に耳を傾ける経営者は少なかった。このように認知が低いなか、製造業者の合意を形成しつつ、B to B取引の成功モデルを確立することは難しい。同期の、NCネットワークなど成功しているB to Bサイトの多くは強い問題意識をもつ製造業者によって構築されたものであるのに対し、商工団体主導による仮想工業団地構想は著者が先鞭を切った。


1. ビジネスモデルの概要

1.1. 仮想工業団地の備えていなければ成らない機能

 仮想工業団地は表1.1に示すように、ハードウェア的な機能とソフトウェア的な機能とを備えていなければならない。ハードウェア的な機能とは、インターネットなどのインフラストラクチャーのほか、ホームページコンテンツとしての機能がある。また、ソフトウェア的機能として、意思決定機能、渉外的機能、与信機能、知的所有権保持機能、危機管理機能、共同受注促進機能、ITリーダ育成機能、情報支援機能などの機能がある。

             

 ハードウェア機能として重要なことは、企業の購買担当者が検索したときに、「検索はずれ」がないことである。従って、検索用のデータベースではフリーキーワード型データベースである「なまず」を使う。また、購買者によってアクセスされやすいコンテンツを制作する。また、データベースの検索はずれを未然に防止するために次の工夫が必要になる。
 @経済産業省の業種分類コードに従わない参加会員の産業区分を行っておくこと
 A利用者がワンクリックで目的の技術や企業にたどり着けることを容易にするための業種・技術展開表を備えていること

図1.仮想工業団地の検索機能


 ソフトウェア機能で重要なことは、補助金を使い運用を忘れたシステムになってはいけないということである。最終的には、商工業者の認識を高めつつ、自主自立のWebサイト運営体制を確立してゆく仕組みを作りこんでゆくことである。このためには、地域におけるECリーダの育成、成功事例の作りこみおよび商工団体協力による普及が不可欠である。


1.2. 仮想工業団地を動かす組織体制

 仮想工業団地を円滑に運営し、自立的組織として有効に機能させてゆくためには、意思決定者、インフラ提供者、助言者・運営者、参加企業の4社が互いに明確な責任を自覚することにある。このため、運営組織は組織図と 運営規約を明文化する。

●意思決定者の責任
 運営規約を作成・承認する。参加希望企業を審査・承認する。この他、サイト運営予算を確保・徴するなど重要な意思決定、商工会間の調整を行う。また、商工会経営指導員は日経テレコンを使って、要望があった企業に与信情報を提供する。

●インフラ提供者の責任:ISP(Internet Service Provider)
 高速回線、安定したコンテンツ掲載スペースを提供する。ドメインを維持する。

●助言者・運営者の責任
 B to B取引の実現、引合いからまでの困難な手順の克服、共同受注の窓口、与信が困難な企業者情報の検索調査、危機管理対策の計画と遂行・検証、事業妨害者・クラッカー対策、知的所有権の申請、アクセスログ解析情報の提供。 参加企業の責任  取引によって発生した利害に関する責任、PLおよび瑕疵担保責任による責任、共同受注の失敗による幹事責任など。会費を納入する義務。

 運営規約・委託契約を定めてゆくうえで重要なことは、以下の通りである。
 @ 下請負業者選定にあたって、「サイト要求定義書」を明文化すること
 A 下請負業者契約中に守秘義務の規定を盛り込むこと
 B 仮想工業団地に参加企業に 免責規定に合意していただいたうえ、契約すること

図2.仮想工業団地のワークフロー



2. コンテンツポリシ

2.1. B to Bマーケティングコンセプトと製造業者の認識の改善

 Webコンテンツを「銭の取れるシステム」とするためには、B to BコンテンツとB to Cコンテンツのアクセス状況の差異についてアクセスログ解析を使い理解することである。

●B to BとB to Cコンテンツの差異
 図2.1(巻末)をから、B to Bコンテンツは、次のような特性を有していることがわかる。
@ B to Cコンテンツと比較してアクセス数が少なくても成果を出せること
A coドメイン,orドメイン付き組織からのアクセスが集中する
 このデータを開示することによって、著者は「アクセスが少なくても優良企業を捕まえれば継続取引が望めること」、「そのためには購買担当者を説得し、利用しやすいコンテンツが必要なこと」参加企業の経営者に十分認知していただくことが肝要である。

● B to Bを成功させるポリシ
 上記需要を満たす優良コンテンツを制作してゆくためには、製造業者から購買担当者が必要な情報を十分採取してゆくことである。そのために、明確なマーケティングポリシを示し、これを少しずつ実証しつつ、参加企業の経営者の信用を確保してゆくことである。

[B to Bサイト構築のために4大コンセプト]
@ outsource:徹底した大企業からの外注狙い
A specialty:他社を差別化する技術情報・特許の掲載
B solution:具体的な問題解決能力の提示、実績、納品先の掲載
C Corroboration :共同受注、横受け、地域や組織の枠を越えた連携

 B to Bにおいて、@〜Bを満たせば、大概の場合、引合いを取ることは意外に難しくない。しかし、正式受注に失敗するケースとして、「受注と生産量との乖離」、「複数の専門能力の要求」がある。これらを補完するためにCの共同受注体制が必要となる。


2.2. コンセプトに基づくコンテンツ制作ポリシ

●アクセスを向上させる仕組み
 アクセス数は多いほうがよい。そこで著者は Yahoo! JAPAN、goo、infoseek、Googleの4大サーチエンジンで製造業者の要求するキーワードでトップに表示する手段を確立、参加会員企業に公開している。これを「サーチエンジン対策」と呼ぶ。

●購買者の使いやすい仕組み
(1)B to B引合いの傾向
 B to B実務現場において、製造業の購買担当者からの引合いには「電話での受注が多い」、「品質、納期、実績を重視」した受注であること、が分っている。
(2)製造業者と連携したコンテンツの作りこみ
 従って、著者は、製造業者と徹底的に話し合い、次のような製造業者紹介のコンテンツ制作を指導する。
 @ 企業名より 技術カテゴリ重視したコンテンツ、技術キーワードの多様
 A 電子メールアドレスよりも、電話、FAX番号の重視・拡大表示
 B アクセスした購買担当者が、購買稟議書参考資料として印字・添付できること




3. 効果測定の手段と実績の評価

3.1. 効果測定の手段
 製造業者がインターネットに期待するものは、アクセス数の増大による企業認知の向上と受注の拡大である。したがって、著者はコンサルティング初期段階で仮想工業団地の評価基準を明確にする。

[評価基準(目標)]
1. サイト全体のアクセスヒット数トップページ50ヒット/日以上の確保
2. 仮想工業団地開所半年の成果として1000万円の受注確保
3. アクセスログ解析によるホームページに対する他企業からのアクセスを証明


3.2. 実績の評価
 著者は過去において、3つのポータルサイトを手がけている。その実績を表3.2に示す。


3.3. 他地域への標準モデルの普及
 上記、実績を評価していただき、本ビジネスモデルは次のような地域で普及活動が進められている(表3.3)。また、最近では業種を絞り込んだ協同組合や単独企業企画の仮想工業団地構想依頼もある。仮想工業団地のノウハウを活かしつつ、カタログパークとしてポータルサイト開業を目指している。さらにEC技術、IT技術を地域に定着させるためにECリーダの育成カリキュラムを展開している。


 今後は、これらのサイトと既存のサイトを有機的に連携させ、「EC B to B協議会」として、人的交流を含めた様々な交流を進めてゆくことを目標としている。




まとめにかえて

 一部のコンサルタントのなかには、「ポータルサイトの時代は終わった」と著書のなかで明言するようなケースがあるが、仮想工業団地のソフトウェア機能を軽視しすぎているのではないか。製造業者達に有効な助言を続けることによって、仮想工業団地は年々進化を遂げ年間数千万円〜1億円以上の受注を確実に地域に導くことはもはや定常的となっている。また,その結果、地域の経営者との間に密接な信頼関係が築かれつつあることは看過できないことを指摘しておきたい。
 著者および中小製造業経営者はIT資産を事業資産として強く認識しつつある。仮想工業団地の成功に伴い、著者の商標を侵す団体や著者らの成果を無断引用・誤記し、自らの著書に示す人々も出現するに至った。さらには、悪意のクラッキング行為を仕掛ける人々もいる。このため、著者は現在ISO17799「情報セキュリティ国際規格」の技術を導入するとともに知的所有権管理実務および法務対策に全力を挙げて取り組み成果をあげつつある。




・参 考

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